コーヒーは“焙煎度”で変わる:豆選びと家淹れの基礎

食品

同じ産地・同じ器具でも、味を大きく左右するのが焙煎度です。浅煎りは明るい酸味と果実味、中煎りはバランス、深煎りは苦味とコク。まずは焙煎度を軸に豆を選び、家淹れでは粉量/挽き目/湯温/抽出時間の4点を揃えると、安定しておいしくなります。ここでは焙煎度の目安、ハンドドリップの基準レシピ、失敗時のリカバリー、保存と水の話までを一気に整理します。

焙煎度チャート(味の目安)

  • 浅煎り:レモン・ベリーのような酸味。明るく軽快。アイスや炭酸割りにも合う。
  • 中浅煎り:果実と甘さの両立。ナッツや柑橘のニュアンス。
  • 中煎り:バランス型。チョコやキャラメル感が出やすい。日常の定番に。
  • 中深煎り:ほろ苦さと甘さのコントラスト。ミルクとも好相性。
  • 深煎り:力強い苦味とボディ。アイスコーヒー、カフェオレ向き。

まずはこの“基準レシピ”から(1杯分)

  • 粉量:12〜15g(初心者は14g
  • お湯:210ml(粉:湯=1:15)
  • 挽き目:中細挽き(グラニュー糖〜食塩の中間くらい)
  • 湯温:浅煎りは92〜94℃、中〜深煎りは88〜92℃
  • 抽出時間:2分30秒前後(注湯開始〜落ち切り)

手順:①ドリッパーとサーバーをお湯で温め、紙をセット。②粉を入れ、中心に少量のお湯(粉の2倍量)で40秒蒸らし。③円を描きながら3回に分けて注ぎ、合計2:30前後で落とし切る。落ち切り直前のポタポタは待ちすぎないのが雑味回避のコツ。

味がブレた時の“原因と対処”早見表

  • 酸っぱすぎる:挽き目を細かく/湯温を1〜2℃上げる/抽出を10〜15秒だけ長く。
  • 苦い・重い:挽き目を粗く/湯温を1〜2℃下げる/抽出を10〜15秒短く。
  • 薄い・物足りない:粉量+1g、または比率を1:14に。蒸らしを5〜10秒延長。
  • えぐみ・渋み:最後まで絞りきらない/粉床をえぐる強い注ぎをやめる/紙と器具の予熱徹底。

豆の選び方:最初の3袋で“自分の軸”を作る

  • 袋1:浅〜中浅煎り(明るさを体験)
  • 袋2:中煎りブレンド(バランス基準の把握)
  • 袋3:中深〜深煎り(ミルク対応と苦味の幅)

購入時は焙煎日の記載を確認。焙煎後3〜14日がピークという焙煎所が多く、粉に挽いたら風味の落ちが早まります。最初は少量を高回転で買うのが正解です。

保存の基本:酸素・光・熱・湿気を避ける

  • 常温:未開封は遮光缶で。開封後は2週間以内に飲み切り。
  • 冷凍:飲み切り分を1杯分ずつ小分け。取り出した分は解凍せず即挽く(再冷凍は香り落ち)。
  • 挽き:可能なら都度挽き。香りの持ちが段違い。

“水”で味が変わる:硬度と温度の考え方

  • 軟水(硬度〜60mg/L):すっきり軽快。浅煎りの果実味が出やすい。
  • 中硬水(60〜120mg/L):甘さとコクのバランスが取りやすい。
  • 温度:浅煎りは高め(92〜94℃)で抽出効率UP、深煎りは低め(88〜90℃)で雑味を抑える。

器具は最小限でOK:揃えるならこの3つ

  • ドリッパー:最初は扱いやすい台形か円錐1〜2杯用。
  • グラインダー:手挽きでも十分。刻みが揃うほど安定。
  • ケトル:細口だと注ぎの再現性が高い。温度計はあると便利。

抽出比率の目安(覚えやすい3段階)

  • ライト:1:16(粉12g:湯192ml)…浅煎り向き。ごく軽い飲み口。
  • 標準:1:15(粉14g:湯210ml)…迷ったらこれ。
  • リッチ:1:14(粉15g:湯210ml)…ミルクや氷で割る前提に。

アイス&ラテ用の簡単アレンジ

  • 急冷アイス:グラスに氷120g。濃いめ(1:14、湯180ml)で抽出し、落ちたそばから氷へ。香りを閉じ込める。
  • ラテ用濃縮:粉18g:湯180ml(1:10)。深〜中深煎りで。スチームなしなら温めたミルク150mlで割る。

“よくある勘違い”を正すヒント

  • 濃い=粉を増やすだけ? → 抽出時間や挽き目も一緒に見直す。粉だけ増やすとえぐみが出やすい。
  • 浅煎りは酸っぱいから苦手? → 挽き目を細かく・湯温を上げる・抽出を少し長くで甘さが出る。
  • 深煎りは焦げ味? → 低温・短時間・粗め挽きで甘苦さが立つ。ミルクと合わせる前提だと魅力が倍増。

1週間トレーニング:味の“地図”を作る

  • Day1–2:標準レシピ(1:15、2:30)で浅・中・深を飲み比べ、感じた言葉を3つずつメモ。
  • Day3–4:浅煎りは湯温+2℃、深煎りは−2℃で再挑戦。違いを一言で記録。
  • Day5–6:挽き目を一段階ずつ変えて再検証。
  • Day7:ベスト設定で淹れ、比率を1:14と1:16で確認。自分の定番を決める。

コーヒーは“好みを言語化できるか”で一気に楽しくなります。焙煎度を起点に、粉・挽き目・湯温・時間を少しずつ動かし、ノートに残す。たった1週間で、自分の定番レシピが手に入ります。